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腸内フローラの多様性とは|菌の種類が多いほど良いといわれる理由

腸内フローラとは(腸内細菌叢の基礎)

私たちの大腸を中心とした腸内には、約100兆個・500〜1,000種類もの細菌が生息しているとされています。これらの腸内細菌が腸の粘膜に沿って集落を作り、まるで花畑(フローラ)のように分布している様子から「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。

腸内フローラは人それぞれ固有のものであり、同じ双子でも腸内フローラの構成は異なることが研究でわかっています。食事・生活習慣・年齢・遺伝・過去の感染歴・抗生物質の使用歴など、さまざまな要因が腸内フローラの形成に影響します。

腸内細菌の主な分類

腸内細菌は大きく以下のように分類されています。

腸内フローラのバランスが善玉菌優位に保たれることが腸の健康の基本とされていますが、近年の研究では「バランスの比率」だけでなく「腸内細菌の種類の豊富さ(多様性)」もまた健康に深く関わっていることが明らかになりつつあります。

多様性とは何か(なぜ「菌の種類が多い」ことが重要なのか)

腸内フローラの「多様性」とは、腸内に生息している腸内細菌の種類の豊富さを指します。たとえ善玉菌の数が多くても、特定の菌種だけが偏って多い状態よりも、多種多様な細菌が均衡を保ちながら共存している状態の方が腸内環境として健全であると考えられています。

生態系の多様性と腸内フローラの類似点

腸内フローラの多様性は、自然界の生態系に例えられることがあります。森の生態系が多様な動植物によって安定して維持されるように、腸内フローラも多様な菌種が役割分担をすることで、外部からの病原菌の侵入への抵抗力や環境変化への適応力が高まると考えられています。少数の菌種だけが支配的な腸内環境は、いわば「単一作物農業」のように、何らかのショックに対して脆弱になりやすいとも言われています。

多様性の指標(アルファ多様性・ベータ多様性)

腸内フローラの多様性を評価する際には、「アルファ多様性(ひとつのサンプル内での菌種の豊富さ)」と「ベータ多様性(異なるサンプル間での菌種構成の違い)」という概念が研究上用いられます。健康な人の腸内フローラはアルファ多様性が高い傾向があると報告されており、さまざまな疾患との関連も研究が進んでいます。

腸内フローラの多様性と健康の関係

腸内フローラの多様性が健康に与える影響についての研究は近年急速に拡大しており、多くの疾患や体の状態との関連が報告されています。

健康・疾患との関連多様性の状態(研究上の傾向)
健康な成人腸内フローラの多様性が比較的高い傾向が報告されている
肥満・メタボリックシンドローム腸内フローラの多様性が低下している傾向が報告されている
炎症性腸疾患(IBD)腸内フローラの多様性が著しく低下していることが知られている
過敏性腸症候群(IBS)腸内フローラの構成の乱れと関連している可能性が研究されている
アレルギー・自己免疫疾患多様性の低下が発症リスクと関連する可能性が示されている
高齢者加齢とともに腸内フローラの多様性が低下する傾向がある

これらの関係は相関関係であり、多様性の低下が疾患の「原因」であるとは必ずしも断言できません。ただし、腸内フローラの多様性を維持・向上させることが全身の健康にとって重要な取り組みであるという考え方は、研究者の間でも広く共有されつつあります。

免疫との関連

腸には全身の免疫細胞の約70%が集中しており、多様な腸内細菌との相互作用によって免疫システムが適切に訓練・調整されるとされています。多様性の高い腸内フローラは、免疫システムが過剰反応(アレルギー・自己免疫疾患)や過少反応(感染症への弱さ)に陥ることなく、バランスよく機能することを助けると考えられています。

現代人の腸内フローラが多様性を失いやすい理由

現代の生活環境は、腸内フローラの多様性を損なう要因が多いとされています。

食生活の画一化・食物繊維の不足

加工食品・ファストフード・コンビニ食が中心の食生活では、腸内細菌が利用できる食物繊維の種類と量が大きく不足します。食物繊維の種類が少なくなると、特定の菌種しか増殖できなくなり、腸内フローラの多様性が低下するとされています。伝統的な食生活(多種多様な野菜・発酵食品・豆類・海藻を日常的に摂る食事)を送る人々は腸内フローラの多様性が高い傾向があるという研究報告があります。

抗生物質の使用

抗生物質は感染症の治療に不可欠ですが、腸内の幅広い菌に影響を与え、短期間で腸内フローラの多様性を大きく損なうことがあります。服用後の腸内フローラの回復には数週間から数か月かかることもあり、完全には回復しないケースもあるとされています。

都市生活・清潔すぎる環境

「衛生仮説」という考え方によると、子どもの頃に多様な微生物に接触する機会が少ないと、免疫システムが適切に訓練されず、アレルギーや自己免疫疾患のリスクが高まるとされています。過度に清潔な環境は、腸内フローラの多様性の低下とも関連している可能性があると研究されています。

ストレス・睡眠不足

慢性的なストレスや睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、腸の蠕動運動や消化液の分泌に影響を与えます。腸の動きが乱れると腸内細菌の生存環境が変化し、多様性が失われやすくなるとされています。

多様性を高める食事の工夫

腸内フローラの多様性を高めるための食事として、最も重要とされているのは「食べる食品の種類を増やすこと」です。

30種類の植物性食品を週に食べる

大規模な腸内フローラ研究(American Gut Projectなど)では、週に30種類以上の植物性食品を食べる人は、10種類以下の人と比べて腸内フローラの多様性が有意に高いことが報告されています。「30種類」と聞くと多く感じますが、野菜・豆類・果物・全粒穀物・きのこ・ナッツ・海藻・ハーブ・スパイスなどを合計すると、日本の家庭料理なら比較的達成しやすい目標です。

発酵食品を毎日取り入れる

ヨーグルト・納豆・味噌・キムチ・ぬか漬け・甘酒などの発酵食品は、多様な善玉菌を補充するだけでなく、腸内細菌が利用する発酵産物(短鎖脂肪酸など)も含んでいます。毎日複数種類の発酵食品を少量ずつ取り入れることが、腸内フローラの多様性を高めるうえで効果的とされています。

色とりどりの野菜を積極的に食べる

野菜の色(赤・黄・緑・紫・白など)はポリフェノールやファイトケミカルの種類の違いを反映しており、それぞれが腸内の異なる菌の栄養源となる可能性があります。「食べるレインボー」と呼ばれる概念のように、色とりどりの野菜・果物を組み合わせることは腸内フローラの多様性向上につながるとされています。

多様性を下げる習慣

腸内フローラの多様性を損なう可能性がある習慣・状況を把握しておくことも大切です。

腸内フローラの多様性を高めるための実践ポイント

腸内フローラの多様性を日常生活で高めるために、実践しやすいポイントをまとめます。

食事のポイント

  1. 1回の食事で3〜5種類の野菜を取り入れる(同じ野菜より異なる種類を意識する)
  2. 白米・白パンを全粒米・全粒粉パンに置き換える
  3. 毎食、納豆・ヨーグルト・味噌汁など発酵食品を1品加える
  4. 週に2〜3回は豆類(大豆・ひよこ豆・レンズ豆など)を食べる
  5. きのこ・海藻を積極的に副菜に取り入れる
  6. 季節の食材を意識的に食べる(旬の食材は栄養価と多様性に富む)

生活習慣のポイント

  1. 週3〜5回・30分程度の有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・自転車など)
  2. 毎日7〜8時間の睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを維持する
  3. ストレス解消の習慣(瞑想・趣味・入浴など)を持つ
  4. 自然環境(公園・森林など)と触れ合う機会を意識的に作る

よくあるご質問

腸内フローラの多様性が低いとどんな問題が起こりますか?
腸内フローラの多様性が低下すると、腸のバリア機能の低下・免疫の調整機能の乱れ・特定の悪玉菌が増えやすくなる・短鎖脂肪酸などの有益な物質の産生が低下するなどの影響が生じる可能性があるとされています。肥満・アレルギー・炎症性腸疾患・精神的な不調との関連も研究されていますが、多様性の低下が必ずしもこれらを引き起こすとは言い切れず、相互に関連していると考えられています。
腸内フローラの多様性を上げるのに最も効果的な食事は何ですか?
単一の「最強食品」があるわけではなく、多様な植物性食品を週30種類以上食べることが多様性向上に最も効果的とされています。野菜・豆類・全粒穀物・きのこ・海藻・果物・ナッツ・発酵食品を日常的に幅広く取り入れることが、腸内フローラの多様性を高めるうえで最も根拠のあるアプローチとされています。
腸内フローラの多様性はどうやって調べますか?
腸内フローラの構成・多様性は、便のサンプルを専門機関に送付して次世代シーケンシング(NGS)という技術で解析する「腸内フローラ検査(腸内細菌叢検査)」で調べることができます。一般消費者向けのサービスも国内外で展開されています。ただし、検査結果は腸内環境の「スナップショット」であり、食事・体調・検査方法によっても変動するため、参考情報として活用するのが適切です。
偏食が多いと腸内フローラの多様性は下がりますか?
はい、偏食は腸内フローラの多様性を低下させる大きな要因のひとつとされています。特定の食品しか食べない場合、腸内細菌が利用できる食物繊維・ポリフェノール・オリゴ糖などの種類が限られ、特定の菌種しか増えることができません。食べる食品の種類を少しずつ増やすことが、腸内フローラの多様性回復の第一歩となります。

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